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焼酎通販専門店「焼酎のひご屋」店長の肥後です。
焼酎には、同じ銘柄であっても、20度のものと25度のものがあることがあります。
メジャーなところでは、宮崎の霧島酒造「黒霧島」や、大分の三和酒類「いいちこ」などが有名ですね。
20度焼酎のある銘柄は、特に宮崎や大分に多くあります。
同じ焼酎の銘柄に20度と25度がある理由を知っている人は、地元の宮崎の人でも知らない人が多いようです。
・宮崎の人はなめらかな焼酎が好きだから
とか、
・宮崎の人は生(き)で焼酎を飲む人が多いから、飲みやすいようにあらかじめ薄くしてある
とか、いろいろな俗説がありますが、はたして真相はどうなのでしょうか。
なぜ同じ銘柄で20度のものと25度のものがある場合があるのかについてお話していきます。
20度焼酎の理由。宮崎の人はなめらかな焼酎が好きだから?
20度焼酎がある理由について、割りと多くの人が思っているのは、宮崎の人はなめらかな焼酎が好きで、優しい味わいの20度焼酎が好きだから、という理由です。
その他にも、宮崎の人は焼酎好きで、ストレートで焼酎を飲むことが多いので、ストレートで飲みやすいようにあらかじめ割り水をしてあるという説です。
これらの説も、いまも20度焼酎が地元で根強く支持されていることを考えると、あながち間違いでもないといえます。
ですが、本来20度焼酎がつくられ始めたきっかけというのは、第二次世界大戦終戦後の混乱期、酒の密造が横行し、酒税がまだ明確に定まっていなかった時代にまで遡るのです。
20度焼酎が普及した理由は、戦後の混乱期にまで遡る
20度焼酎が作られるようになった理由が、戦後の時期にあるとはどういうことなのでしょうか。
まず、お酒には酒税が課せられています。
酒税は、ざっくりというとアルコール度数によって課税金額が変わり、アルコール度数が高くなるほど課税金額が上がります。
つまり、アルコール度数が高いお酒になるほど、酒税分が価格に反映されて高くなるわけです。
酒税は国の貴重な財源になるので厳密に定められており、焼酎であれば、戦後しばらくは、アルコール度数25度以上のものしか製造を許可されていませんでした。
しかし、当時の貧しい庶民には、25度の価格の高い焼酎は買いにくいものでした。
そうした背景のなか、「密造焼酎」が出回ります。
密造焼酎・カストリ焼酎の普及
密造焼酎とは、カストリ焼酎などとも呼ばれ、国から酒造の許可を受けていない業者などによって作られた粗悪な焼酎です。
この密造焼酎は、素人が作るわけですから製造技術が低く、質が悪くアルコール度数も20度程度のものが多かったようです。
密造焼酎対策の酒税の変更で、正規メーカーも20度焼酎をつくるように
こうした密造焼酎対策として、酒税が改正され、国から酒造許可を受けている正規の業者も25度以下の焼酎を作ることができるようになりました。
アルコール度数が低くなると酒税分の料金が安くなるので、庶民にも手が届くようになり、正規の業者が作った質の高い焼酎を普及させることで、密造焼酎を駆逐するというわけです。
密造焼酎をつくっていた業者は、宮崎県に多くいたようで、宮崎の人にはアルコール度数20度程度の焼酎が馴染みのあるものになっていました。
その結果、密造焼酎などが無くなってからもずっと、25度の焼酎よりも20度焼酎の方が普及し、いまに至るというわけです。
20度である味わいの点でのメリットもあります
このような複雑な事情で誕生した20度焼酎ですが、いまだに宮崎など地元で20度焼酎が支持されていることを考えると、アルコール度数が低いことでの味わいでのメリットもあると思います。
焼酎は通常、アルコール度数40度ほどの原酒に水を加えて度数を25度程度まで下げ、瓶詰めして出荷します。
つまり、アルコール度数の低い焼酎には、より多くの水が入っているということです。
この水は、焼酎の仕込みにも使われている水なので、その焼酎と最もよく馴染む水であるのは間違いありません。
25度の焼酎を自宅の水道水やミネラルウォーターなどで割って20度にしたものよりも、なめらかな口当たりであると思います。
20度焼酎が普及した宮崎とは違って、鹿児島では25度以下の焼酎はあまりつくられていなかったのですが、最近、夏などにも飲みやすい焼酎として、アルコール度数の低い焼酎も出てきています。
ぜひ、アルコール度数の低い焼酎にもチャレンジしてみてください。
以上、20度焼酎が誕生した少し複雑な事情でした。